離され島冒険記第二部「大陸へ」3-3.

離され島冒険記第二部「大陸へ」

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「怖い」

サイが言った。

「大丈夫。サイとコウのことは必ず俺が守るから」

ソウはサイの目を見て言った。

「うん」

サイはおずおずと返事をした。

「なるべくいつも通り、遊んでいるように振舞えってリキが言ってた」

「わかった」

ソウの説明に、コウとサイは一旦顔を見合わせてから返事をした。後ろに立っていたテラも無言でうなずいた。

「行くよ。笑いながら、話をしながらついて来て」

「うん」

四人は近くの人に米を運んで来ると声をかけて、厨房を後にした。

 

ソウと女の子達の隊、リョウ、ケン、そして、ラウトの隊、単独のリキ、計三つの隊が別々に行動する。向かう先は台地に上がる階段だ。別れて行動することで目立たないようにする。そして、万が一失敗した時には、残った隊は関係がない振りをすることで話が決まっていた。三隊が揃ったら、最初にリョウとケンが喧嘩を始める。番をする兵二人の気を引くためだ。上手く兵が階段から離れたら、リキが扉に掛けられた鍵を剣で壊す。上手くいかなくてもリキが兵の不意をついて襲い掛かる手筈だ。そして、最初にソウ達四人が階段を上がる。通常夜の間は木材伐採作業を監視するための兵は台地上にはいない。だが、念のためソウがもう一本の剣を持っていく。その際に、兵が番をするために灯しているかがり火から火をもらい、松明を掲げて上がるのだ。上で待つガリが見つけやすくするためだ。松明については予めテラが用意した。炭の材料となる薪と厨房で使っていたぼろ布から作ったのだ。

「厨房の油汚れを拭くために使っている布だから、燃えやすいはずよ」

テラは自信ありげにほほ笑んだ。ソウ達の次は、リョウ、ケンとラウトが続く。リキはしんがりだ。

ラウトは一人では歩けないほど弱っていた。僕とケンは両脇から彼を支えて、何とか台地の登り口に到着した。前を見るとソウ達四人は既に着いていて、近くの建物の影から兵の様子を伺っていた。振り返ると、少し離れた所をリキが口笛を吹きながら歩いて来る。僕はケンを見た。ケンもこちらを向いた。僕らはそのまま兵から少し離れた所まで進んで行って、ライトの腕を離した。ラウトはくずおれるように座り込んだ。

「なんだよ。どうするつもりなのだよ」

僕はケンの首根っこをつかんで声を荒げた。

「どうするもこうするも無いだろう。ラウトをこのまま放って置けって言うのか?」

ケンは両手で僕を突き飛ばした。僕はしりもちをついた。

「何だよ!」

僕が言うと、ケンが僕の腹に上乗りになって殴る真似を始めた。兵が駆け寄ってくる足音がした。

「お前達何をしているのだ!」

地面に寝転がる僕の目に四本の兵の足が入った。気が付かない振りをして、ケンが何度も僕の頬を平手打ちにした。

「お前のせいで昼間は危うく首を跳ねられるところだったのだぞ」

今日の昼間、僕とケンが危うくクレの剣にかかるところだったのは、鉄炉にいる者ならだれでも知っている。なるほど、喧嘩が起こっても仕方がない理由だ。

「おい、止めろ!止めるのだ!」

二人の兵が僕からケンを引き離さそうと、ケンの両脇に手を入れた。僕は見たところケンを引き離そうとしているような仕草をしていたが、その実、ケンの肩を引き付けて兵達の邪魔をした。上手く行きそうだと思ったその時だった。

「おーい、喧嘩だ!誰か来てくれ!」

兵の一人が大声を上げた。騒ぎを聞きつけて兵が増えてはまずい。僕はケンの肩から手を放して押し返した。急に力が抜けて二人の兵はひっくり返った。

「ぐえ!」

兵達が小さく叫んだ。起き上がってみると、リキの大きな背中と右手に握られた剣がそこにあった。二人の兵は既に気絶していた。二人の首には当身を喰らった跡が残っていた。

「何があった!」

遠くから近づいて来る兵の声がした。

「急げ!」

小声でリキが言った。

見上げると、ソウ達四人が崖に掛けられた階段を駆け上がって行くのが目に入った。

つづく

離され島冒険記第二部「大陸へ」3-4.

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