棚田の恋

オリジナル小説「棚田の恋」

棚田の恋

棚田の恋2-6.台風来る

丸ひと月ほども逢えずにいた。小高い山の棚田には、週末毎に良太が操る仮払い機のエンジン音が低く長く、そして寂しげに響き渡るのだった。大型台風が天気予報図に姿を現したのは、あと2週もすれば出穂という時期だった。
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棚田の恋2-5.田起こし

棚田は陽子のおじいさんが亡くなってから数年間放って置かれていた。使われなくなった田んぼはあっという間に自然に戻って行く。しかし、木が生えてはさすがにご近所の手前体裁が悪いと、除草隊の親方は木についてだけは生えてくる度に伐採してくれていた。
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棚田の恋2-4.作業開始

毎週、休みの日が来ると良太は棚田のある山に足を運んだ。最初に手を付けたのは水路だった。いずれ田んぼそのものに手をかけなければならないものの、先ずは水路だと良太は考えた。田んぼの整備で最も手間がかかるのは田んぼの水漏れを防ぐための畦塗りだ。
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棚田の恋2-3.前進

「余所者には貸さねえよ」いきなり拒否の言葉が親方の口から発せられた。「どうせすぐ諦めて東京に帰るってお父さん言っていたけど、良太さん今もここにいて頑張っているんだよ。話くらい聞いてあげても良いんじゃないの?」陽子が横から声を上げた。
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棚田の恋2-2.再会

陽子は手慣れた感じで車を発進させて、国道に乗り入れた。マニュアル、4WDの車だった。そのまま無言でアクセルを踏む陽子。良太は彼女の顔を見たい誘惑にかられたものの、陽子が見つめるフロントガラスの向こうを同じように眺めていた。
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棚田の恋2-1.活路

米農家を首になったものの、良太は東京には帰らなかった。ここまで来たのだから、田んぼで米を作りたい。その思いが良太の心を占めていたのだった。良太は工場での仕事を見つけて働きだした。
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棚田の恋1-9.失業

良太は、地元の農薬散布業者に手伝いとして貸し出されたのだった。「薬剤はおめーからな。わけー人めつかってえがったな(薬剤は重いから、若い人が見つかって良かったね)」良太は液体の薬剤をかき混ぜる役を仰せつかった。
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棚田の恋1-8.除草隊

良太はおしゃべりな女性陣から幾多の質問を受けた。「なして、ここさ来たの?」「米農家さ、継ぐだか?」「どこさ、住んでるの?」「結婚してるだか?」最後の質問はいつも決まっていた。「誰か良い人いないの?(付き合っている人はいないのか?)」
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棚田の恋1-7.田植え

田植えの前に苗を育てるのは稲作にとってとても重要だ。「苗半分」つまり苗を上手く育てることは米策における収穫までの道程の内の半分を終わったようなものだという人すらいるほどだ。
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棚田の恋1-6.田舎

移住初日、日曜日だったが良太は研修先となる農家に到着の挨拶に向かった。米35ヘクタールを主体とする家族経営に近いの農業法人だった。一般住宅で言えば3階建て程度の高さのある真四角な建物の入り口ドアをノックして、アルミ製ドアを開く。
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