棚田の恋

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棚田の恋2-1.活路

米農家を首になったものの、良太は東京には帰らなかった。ここまで来たのだから、田んぼで米を作りたい。その思いが良太の心を占めていたのだった。良太は工場での仕事を見つけて働きだした。
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棚田の恋1-9.失業

良太は、地元の農薬散布業者に手伝いとして貸し出されたのだった。「薬剤はおめーからな。わけー人めつかってえがったな(薬剤は重いから、若い人が見つかって良かったね)」良太は液体の薬剤をかき混ぜる役を仰せつかった。
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棚田の恋1-8.除草隊

良太はおしゃべりな女性陣から幾多の質問を受けた。「なして、ここさ来たの?」「米農家さ、継ぐだか?」「どこさ、住んでるの?」「結婚してるだか?」最後の質問はいつも決まっていた。「誰か良い人いないの?(付き合っている人はいないのか?)」
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棚田の恋1-7.田植え

田植えの前に苗を育てるのは稲作にとってとても重要だ。「苗半分」つまり苗を上手く育てることは米策における収穫までの道程の内の半分を終わったようなものだという人すらいるほどだ。
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棚田の恋1-6.田舎

移住初日、日曜日だったが良太は研修先となる農家に到着の挨拶に向かった。米35ヘクタールを主体とする家族経営に近いの農業法人だった。一般住宅で言えば3階建て程度の高さのある真四角な建物の入り口ドアをノックして、アルミ製ドアを開く。
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棚田の恋1-5.転機

翌日から良太は米農家について調べるようになった。すると米農家の後を継ぐ人が減っていて、耕作放棄地が増えていることがわかった。跡継ぎがいないのは米農家に限ったことではなく、野菜や果樹の農家でも同じように人が減っているようだった。
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棚田の恋1-4.ご飯

ミルキークイーンと袋にマジックで書かれていた。苗から育てたわけではないものの、自分が稲刈りしたお米だ。ミルキークイーンを取り出すと、その下には更にこしひかりと書かれた袋も入っていた。遊びで色々植えてみたと男性が言っていたのを思い出した。
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棚田の恋1-3.贈り物

「どのくらい収穫できるのですか?」 水をくれた男性にした質問を思い出す。 「いやー、たいして獲れないよ。天然の肥料しかやらないし、ここは冷たい水を流しっぱなしにするから生育が遅いしね…
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棚田の恋1-2.棚田

棚田と言えば日本海側の、米の生産地として有名な地域に残っているくらいのものだと思っていた。 「こんな場所に棚田があるのだな」 普段生活している場所からほんの少し足を延ばすだけで、観光旅行で訪ねるような風景に出会えたことに良太は驚いていた。
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棚田の恋1-1.週末

社会人になって5年。恋人もいない良太は、週末になるとデジタルカメラを持って特にあてもなく出かける日常を送っていた。スマホでなくデジタルカメラなのは、ついでのものではないちょっと特別な存在としての写真を撮りたいからなのかもしれない。
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