離され島冒険記第三部「国興」b-5鍛鉄4

離され島冒険記第三部「国興」

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鉄炉を造る。どうしようか。熱に強くて、丈夫で、簡単。考えた挙句、僕らは土器作りと同じ方法をとることにした。粘り気のある土を集めて水を混ぜてこねる。土器の場合は、できた粘土を縄状に伸ばして丸く重ねる手順なのだけれど、やってみるとそれでは大きな炉にならないことがわかった。テラのように土器造りが得意であれば、また違ったのだろうけれど、重ねていく段階で重さに耐えられずに下の方から潰れ、崩れてしまうのだ。僕らは更に熟考を重ねた。そして、粘土を四角くして乾かし、重ねる方法を思いついた。時間はかかるものの、これならちょうど良い大きさ、高さにすることができる。一度火に触れた粘土は固まるので、鉄を取り出す時に崩しても、粉々にさえならなければまた使うことができる。粘土を積み上げたらすき間に泥を塗りつけて、風が入らないようにする。乾いたら中で小さな火を焚き、問題なければ更に大きな火にしていく。中に重い砂鉄が入る事を考えると炉は丈夫でなければならない。その為、外から更に泥を塗って補強を繰り返すのだ。だが、この時点で問題が浮かび上がった。火が赤いままなのだ。僕らが求める火の色は、もっと明るい、今の色と太陽の色の中間くらいを目指していたのだった。火が熱くならない。野焼きとたいして変わらない色をしているということは、鉄を溶かすには熱さが足らないということだ。何かが炉の中を冷やしている。そうとしか思えないのだけれど、原因が何なのかがわからない。周囲を森が囲んでいる分、吹き曝しだった鉄炉に比べて寒くも無い。

「は!もしかして!」

ケンが爪を立てて地面を掘りだした。一旦何かを思いつくと後先考えない彼ならではの行動なのだけれど、唖然としてばかりはいられない。

「待った、待った!怪我をしてしまうよ」

ケンを止めた僕は、地面を均す時に使った木材を手に取った。

掘ってみれば良いのだね?」

うなずくケンの代わりに地面の土を薄く剥いでいく。

しばらく掘り進むと出来上がった穴の壁面にじわっと水が滲み出してくるのがわかった。

「リョウ、これだよ。地面の中の水が炉の中を冷ましてしまうのだ」

ケンが真顔で言った。大陸の鉄炉は、そもそもが乾いた土地に建てられていた。それでこのような問題が起きなかったのだ。僕らのいるこの土地は雨が多く、日照りの続く真夏ですら森の中で地面に触れれば湿り気を感じる。この地面の上でいくら火を燃やしたところで、熱い火は起きないということだ。相談の結果、僕らは川まで通じる溝を掘り、地面の水を抜くことにした。その上に細木を渡して土で埋め戻す。そして、一旦解体した炉を改めて築き直した。薪を入れて火をつける。今度の色は明るい。炭を投入して予め竹を通しておいた穴から風を送る。炎がめらめらと舞い上がった上から砂鉄を流し込む。火の粉が舞い上がった。途端に大きな音がして、炉の底が抜けた。

「失敗だ」

僕はため息をついた。

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火が消えるのを待つ間、僕らは竹を切り出しに向かった。太めのものを沢山伐り出して、更に節を抜く。中をくり抜くには星屑石を細い木の棒に縛り付けて、中を抉っていくことになるので、もの凄く手間のかかる仕事なのだ。夕食後もその仕事に掛りきりになる。

「また失敗だったのかよ。仕方がないな」

ソウの何気ない言葉に心を抉られたりもする。失敗は失敗。何を言われても我慢するしかない。もちろん、文句を言いながらもソウはラウトと二人、夜遅くまで竹をくり抜く作業を手伝ってくれる。仲間の有難さを感じる毎日だった。抜け落ちた炉の床を綺麗に掃除すると、溝を広げてそこに竹を幾段も並べる。その上を土で覆い、更に粘土を積み上げる。火をくべて炭を入れると、徐々に火勢は強くなり、僕らが思い描いていた色の炎が広がった。炭が弾ける小気味よい音がして火の粉が空に舞い上がった。炉の上から砂鉄を流し入れる。今度は何も起こらない。ほっとして一息つく。後は時々炭と砂鉄を交互に足していく単純な作業となる。砂鉄を溶かしている間、僕とケンは粘土で型枠を造った。それが終わるとついに溶けた鉄の取り出しだ。炉の最深部には鉄にならないゴミが溜まるため、炉の少し高い位置の壁を崩して穴を空ける。どろっとした鉄がゆっくり流れ出てきた。用意していた型に流れ込むのをじっと待つ。型が鉄で一杯になると、そのままゆっくり冷やす。手で持てるまでに冷めたら先端部分を火にくべて熱した後、水に入れて急激に冷やす。硬い石で周囲にできた張りを削って形を整える。出来上がったのは、槌二つと梃一つ。つまり、剣を造る時に使う道具だった。剣を作れるようになるのはまだまだ先なのだ。それでも尚、僕らの目には鉄炉の炎以上に輝く、希望の光が宿っていた。

つづく

離され島冒険記第三部「国興」b-6鍛鉄5

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