離され島冒険記第三部「国興」
離され島冒険記第三部「国興」c-1あとがき
リョウを始めとする、離され島の子供達が主人公となる話は今回で終わりです。長い間、離され島の皆にお付き合い下さり、ありがとうございました。今現在、他に二つの短編が、既に頭の中に生まれています。いずれ何らかの形で発表したいと思います。
離され島冒険記第三部「国興」b-9建国-最終話
ぬかるんだ地面。なんども足をとられ、転んだ。起き上り、また走る。僕が止まる度に、先を行くソウがじれったそうに振り返り、下を見てため息をつく。悔しいけれど、身体が思い通りに動かない。
離され島冒険記第三部「国興」b-8鍛鉄7
煤に汚れた顔を洗いに、膝までの雪を掻き分けながら、ゆっくりとした足取りで川辺に向かう。炉に一度火を入れると、鉄ができるまで数日に渡って火を管理し続けなければならない。ケンと代わるがわるとは言え、常に眠気との闘いとなる。
離され島冒険記第三部「国興」b-7鍛鉄6
「王が倒された後の大陸はいくつもの国が乱立して、今も大混乱が続いているようだよ」
ラウトが言った。
離され島冒険記第三部「国興」b-6鍛鉄5
龍ヶ淵での剣造りは、砂鉄を溶かして鉄にするところから始まった。鉄ができると、僕らは手始めに棒状の型に鉄を流し入れた。
離され島冒険記第三部「国興」b-5鍛鉄4
ケンが爪を立てて地面を掘りだした。一旦何かを思いつくと後先考えない彼ならではの行動なのだけれど、唖然としてばかりはいられない。
「待った、待った!怪我をしてしまうよ」
離され島冒険記第三部「国興」b-4鍛鉄3
天の龍、すなわち流星が落ちた場所。昼過ぎにその場所に辿り着いた僕らは、穴が川に抉られてすっかり広く深くなっていることに驚いた。龍ヶ淵。その場所のことを僕らはそう名付けた。
離され島冒険記第三部「国興」b-3鍛鉄2
「父さん、自分達だけでやってみるよ」
炉の向こうで星屑石を打ち掻いている父に僕は言った。
「そうだな、やってみることだな」
父は手元を見ながら言った。
離され島冒険記第三部「国興」b-2鍛鉄1
満月の晩、僕とケン、そしてソウの三人は村中の男衆が集まる会合に参加した。僕らは腰にそれぞれ剣を下げ、一方の手で星屑石を仕込んだ杖を握っていた。
離され島冒険記第三部「国興」b-1帰路6
この川をたどれば故郷の村に行き着くことができる。少しでも早く村について、母さんや父さん、そして、長く離れている友人達に会いたい。そんな思いを胸に抱きながら、僕達は木の根を超え、春から夏に向かう季節の中で鋭く切れやすい葉を伸ばしつつある草を掻き分けながら進んだ。