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草原のチャドをお読みいただいてありがとうございました。ブログ版チャドの旅は将来の伴侶らしき女の子との出会いをもって終わりますが、改訂版をAMAZON kindleの電子書籍として出版しております。そちらもお楽しみいただければ幸いです。
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草原のチャド (冒険小説)
この作品は人類に続く最古の猿人と言われている「サヘラントロプス・チャデンシス」をモデルに書いたものです。サヘラントロプス・チャデンシスはサハラ砂漠南端の七〇〇万年から六〇〇万年前の地層から発見された猿人と思しき化石です。今のところ単体しか発見されていませんので詳しいことはわかっていませんが、首の付け根の穴が類人猿と人類の中間に位置していて、直立歩行していた可能性が考えられています。同時期・同地域の地層からは森林の猿、魚や、ワニ、象、牛、カバなどが見つかっており、森林や湿原など、現在の砂漠とはかけ離れた環境にあって暮らしていたようです。
野生であった頃、人類の祖先は様々な敵に囲まれて常に死と隣り合わせの生活をしていました。そうした危険がもたらした障害を乗り越えた先に、現在の私達に繋がる進化があったのです。狩られる側だった人類祖先と猛獣達との関係は「人は食べられて進化した」ドナ・ハート、ロバート・W・サスマン著、伊藤信子訳に詳しく書かれております。現代とは比べ物にならない、危険を乗り越えて繋がってきた命の結晶が私達現生人類なのです。貴重な命を大事にしていきたいものですね。
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猿人化石はエチオピアから中央アフリカにかけての大地溝帯から多く発見されております。サヘラントロプス・チャデンシスは従来人類発祥の地と考えられていたこれら地域から遠く離れた地で発見されたのも面白い点です。私はこの古猿人の記事を読むにつけ、「旅をしていたのではないか?」と妄想するようになりました。そもそも他の動物と人類を分けるきっかけとなった性質の違いとして、自分の能力を高めようとする「向上心」と新しいものを求める「好奇心」があるのではないかと私は考えております。幾多有る生き物の中で、より強くなるために自らの意思で訓練を積むのは人だけでしょう。この話の中でチャドは、行きたい場所に行く過程で自然と訓練をします。そして自分の身体が変わっていくことに気が付きます。そういった身体の変化に気が付くことを繰り返して、いつしか人は自らの身体能力を高めることそのものに時間を費やすようになったのではないでしょうか。そして、もう一つの大きな違いである「好奇心」がこの物語の最重要テーマです。他の動物と違って地球全体に広がった理由を「好奇心に突き動かされた旅に因るものではないか」と私は考えるに至ったのです。もちろんアフリカ大陸を移動するヌーなど、旅をする動物は他にも存在します。しかし、あくまでも餌となる植物の成長に合わせたものです。チンパンジーなどの類人猿も環境変化にあわせて生存領域が移った様子がありますが、森林域の移動に連れているだけのこと。集団や個体が全く別の環境へ移動する例はありません。人類だけが、慣れ親しんだ環境を出て旅をします。好奇心が移動の原動力となり、旅先で新たな環境に出会うことで進化していった生き物、それが人類であるように私には思えてならないのです。
実際のサヘラントロプス・チャデンシスは、さすがに文中のように思考したり、おしゃべりしたりはしなかったでしょう。ですが、この物語の主人公であるチャドはこの短い物語を読んでくださった皆様の想像の中でこれからも旅をし続けるでしょう。もしかしたら、あなた自身がチャドの旅の続きを生きているのかもしれませんよ。
まえの話に戻る。
物語の始めから読みたい方はこちらをどうぞ。
あとがき
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