離され島冒険記第二部「大陸へ」

離され島冒険記第二部「大陸へ」2-9.

最初に目に入ったのは、細長く伸びた背の低い炉とその手前に座っている一人の男だった。男の右手にはこてが握られており、そのこては、鉄の塊を挟んでいた。鉄塊は今、炉で熱せられている。男の左手は炉に風を送るふいごの取手を握っていて、ゆるやかに前後していた。
離され島冒険記第二部「大陸へ」

離され島冒険記第二部「大陸へ」2-8.

翌朝、ラウトが中々起き上がれないという事態になった。離され島や彼の島ではいつも元気一杯だった彼がなぜこんなことになってしまったのか。「雨でもないのに星が見えないなんて」夜中、ラウトの口からうわごとが漏れるのをケン、ソウ、そして僕も耳にしていた。
離され島冒険記第二部「大陸へ」

離され島冒険記第二部「大陸へ」2-7.

「お前らを騙した屋台の奴らな、呆然としていたぞ」 リキは笑いながら言った。その夜、突然目の前に現れたラウトとリキを囲んで、ささやかな祝宴が催された。
棚田の恋

棚田の恋2-7.最終話「蛍の光」

数年が過ぎた。良太は相変わらず棚田に通い続けていた。米作りだけで生活するのはとうの昔に諦めて、工場勤めをしながらの週末農家。はじめは派遣社員だったものの、真面目に働く良太はいつしか正社員の立場を手に入れていた。
離され島冒険記第二部「大陸へ」

離され島冒険記第二部「大陸へ」2-6.

「でもここに来て、私達は幸せだと感じたの」 続いてコウの口から発せられた言葉に僕らは声を失った。テラがコウとサイをそっと抱きしめた。
棚田の恋

棚田の恋2-6.台風来る

丸ひと月ほども逢えずにいた。小高い山の棚田には、週末毎に良太が操る仮払い機のエンジン音が低く長く、そして寂しげに響き渡るのだった。大型台風が天気予報図に姿を現したのは、あと2週もすれば出穂という時期だった。
離され島冒険記第二部「大陸へ」

離され島冒険記第二部「大陸へ」2-5.

「本当はケンが勝負した方がずっと強いのではないかな?」白黒勝負の帰り道に僕はケン思っていたことを訊ねたのだった。僕の言葉にケンはそんなことはないと笑みを浮かべて首を横に振った。「ただ、ずるの見分け方だけはリョウより上手いかもしれないね」
棚田の恋

棚田の恋2-5.田起こし

棚田は陽子のおじいさんが亡くなってから数年間放って置かれていた。使われなくなった田んぼはあっという間に自然に戻って行く。しかし、木が生えてはさすがにご近所の手前体裁が悪いと、除草隊の親方は木についてだけは生えてくる度に伐採してくれていた。
離され島冒険記第二部「大陸へ」

離され島冒険記第二部「大陸へ」2-4.

鉄を作る上でもう一つ大事な材料がある。それは炭だった。鉄炉の中で鉄を溶かすには大量の炭が必要だ。炭を作るには材木がいる。その材木は河岸段丘の上に広がる森の木を伐採して運んでくるのだった。
棚田の恋

棚田の恋2-4.作業開始

毎週、休みの日が来ると良太は棚田のある山に足を運んだ。最初に手を付けたのは水路だった。いずれ田んぼそのものに手をかけなければならないものの、先ずは水路だと良太は考えた。田んぼの整備で最も手間がかかるのは田んぼの水漏れを防ぐための畦塗りだ。