棚田の恋 棚田の恋2-6.台風来る 丸ひと月ほども逢えずにいた。小高い山の棚田には、週末毎に良太が操る仮払い機のエンジン音が低く長く、そして寂しげに響き渡るのだった。大型台風が天気予報図に姿を現したのは、あと2週もすれば出穂という時期だった。 2021.03.07 棚田の恋
離され島冒険記第二部「大陸へ」 離され島冒険記第二部「大陸へ」2-5. 「本当はケンが勝負した方がずっと強いのではないかな?」白黒勝負の帰り道に僕はケン思っていたことを訊ねたのだった。僕の言葉にケンはそんなことはないと笑みを浮かべて首を横に振った。「ただ、ずるの見分け方だけはリョウより上手いかもしれないね」 2021.03.07 離され島冒険記第二部「大陸へ」
棚田の恋 棚田の恋2-5.田起こし 棚田は陽子のおじいさんが亡くなってから数年間放って置かれていた。使われなくなった田んぼはあっという間に自然に戻って行く。しかし、木が生えてはさすがにご近所の手前体裁が悪いと、除草隊の親方は木についてだけは生えてくる度に伐採してくれていた。 2021.02.28 棚田の恋
離され島冒険記第二部「大陸へ」 離され島冒険記第二部「大陸へ」2-4. 鉄を作る上でもう一つ大事な材料がある。それは炭だった。鉄炉の中で鉄を溶かすには大量の炭が必要だ。炭を作るには材木がいる。その材木は河岸段丘の上に広がる森の木を伐採して運んでくるのだった。 2021.02.23 離され島冒険記第二部「大陸へ」
棚田の恋 棚田の恋2-4.作業開始 毎週、休みの日が来ると良太は棚田のある山に足を運んだ。最初に手を付けたのは水路だった。いずれ田んぼそのものに手をかけなければならないものの、先ずは水路だと良太は考えた。田んぼの整備で最も手間がかかるのは田んぼの水漏れを防ぐための畦塗りだ。 2021.02.14 棚田の恋
離され島冒険記第二部「大陸へ」 離され島冒険記第二部「大陸へ」2-3. 「白黒つけるか」「白黒つけよう」始める勝負のなんと面白いことか。この白黒を通して、僕はいくつかのことを新たに知るのだった。一つは数。そしてもう一つはある男との出会いだった。だれよりも白黒にたけて負け知らず、それがクレと呼ばれる男だった。 2021.02.13 離され島冒険記第二部「大陸へ」
棚田の恋 棚田の恋2-3.前進 「余所者には貸さねえよ」いきなり拒否の言葉が親方の口から発せられた。「どうせすぐ諦めて東京に帰るってお父さん言っていたけど、良太さん今もここにいて頑張っているんだよ。話くらい聞いてあげても良いんじゃないの?」陽子が横から声を上げた。 2021.02.07 棚田の恋
離され島冒険記第二部「大陸へ」 離され島冒険記第二部「大陸へ」2-2. 「てつろへ向けて出発!」ゆっくりと船が進み始めた。大河を登っていくようだ。既に完全に顔を出した太陽の光を浴びて、河は黄金色に輝いていた。水面に揺らめく光の道を目にして、不安よりも何かに期待している自分の気持ちを僕は抑えるができなかった。 2021.02.06 離され島冒険記第二部「大陸へ」
離され島冒険記第二部「大陸へ」 離され島冒険記第二部「大陸へ」2-1. ソウが叫んだ。兵隊達の一人がソウの顔を平手で思い切りはたいた。ソウは吹飛んで倒れこんだ。テラが駆け寄ろうとするも、兵にがっちり腕をつかまれてしまう。僕もケンも屋台の主人と兵隊をにらむことしかできなかった。 2021.01.31 離され島冒険記第二部「大陸へ」
棚田の恋 棚田の恋2-2.再会 陽子は手慣れた感じで車を発進させて、国道に乗り入れた。マニュアル、4WDの車だった。そのまま無言でアクセルを踏む陽子。良太は彼女の顔を見たい誘惑にかられたものの、陽子が見つめるフロントガラスの向こうを同じように眺めていた。 2021.01.30 棚田の恋